学会賞
2022(令和4)年度に「学会賞(フェノロサ賞)」および「特別功労賞(ピゲロー賞)」が創設されました。
2023(令和5)年度、第2回受賞者は、下記となります。なお、授賞式は年次大会会場にて執り行います。
【第2回学会賞(フェノロサ賞)・特別功労賞(ビゲロー賞)】
学会賞(フェノロサ賞)
山田久美子氏(立教大学名誉教授)
対象業績:著作 山田久美子著 『狩野友信−最後の奥絵師、幕末・明治を生きる』(水声社、2021年12月)
授賞理由:本書は、今まで十分に研究されてこなかったフェノロサと日本近代美術に関わる重要人物の基礎的研究として、初めて単著で刊行されたものである。若くして幕府の奥絵師に任ぜられた狩野友信は、フランス皇帝ナポレオン三世に贈呈する「紅葉に青鳩図」を制作した。1862年に遣欧使節によりフランスに届けられた作品はフォンテーヌブロー宮殿に現存する。明治維新後、起立工商会社の事務所で、フェノロサとともに鑑定委員として働き、第1回鑑画会に出品。明治22年(1889年)東京美術学校雇、同24年8月には助教授となった。フェノロサに狩野派の画法を指南するだけでなく、狩野永悳や狩野芳崖を紹介し、フェノロサの日本美術研究に協力、関西の古寺社に残る古画を模写した。1893年のシカゴ万博には≪平治合戦図≫を出品している。狩野友信という江戸狩野派の系譜の核心にいて、その終焉を見届けた画家の生涯と歴史・美術史上の背景、位置づけを、遺族(友信は著者の曾祖父)という立場も踏まえて探求し続け、アイルランド文学研究・文化交流史研究者としての著者の学究的視点、論考を加え、構成した秀逸な伝記となっており、フェノロサと日本近代美術史研究において大いに貢献する、新たな基本文献となる優れた業績として高く評価できる。
受賞者略歴: 山田久美子(ヤマダ・クミコ)
1953年、東京都に生まれる。上智大学フランス語学科卒業。広島大学大学院英語学英文学専攻博士後期課程中退。アイルランド国立大学ダブリン校英語・演劇・映画研究専攻博士課程修了。博士(PH.D.,University College Dublin)。立教大学名誉教授。専攻、アイルランド文学、日米欧文化交流史。主な著書に『異界へのまなざし―アイルランド文学入門』(鷹書房弓プレス、2005年)、『ジェイムズ・ジョイスと東洋――「フィネガンズ・ウェイク」への道しるべ』(水声社、2018年)、主な訳書にャールズ・A・ロングフェロー『ロングフェロー日本滞在記』(平凡社、2004年)などがある。
特別功労賞(ビゲロー賞)
受賞対象: フェノロサ『哲学史』講義 = Fenollosa's lectures on history of
philosophy : 清沢満之フェノロサ講義自筆ノート 続々』(監修・解題:村山保史、翻刻・翻訳・校閲:味村考祐、西尾浩二、Michael Conway、2022年2月) の出版事業 (代表者 大谷大学文学部教授 村山 保史)
選考理由:本出版によって、10年以上におよぶ、東京大学在学時のフェノロサによる西洋哲学関係の未公開講義録とそれに関連する学習録の研究、出版、公開作業(フェノロサ「哲学史」講義 清沢満之フェノロサ講義自筆ノート、及び続、続々)という一大事業が完結した。清沢満之(きよざわ まんし、1863-1903)は、日本の明治期に活躍した真宗大谷派(本山・東本願寺)の僧侶、哲学者・宗教家で、真宗大学(現・大谷大学)の初代学監(学長)。東本願寺育英教校の留学生として東京大学予備門に最高成績で入学、1887年(明治20年)に東京大学文学部哲学科を首席で卒業した。哲学館(現、東洋大学)の創設時に評議員となり、心理学及び哲学史を担当する講師となった。真宗大谷派教団の改革と宗教的真理の解明に取り組んだ近代真宗教学先駆者だったが、肺患と極度の制欲自戒生活により早世した。そうした異色の人物で秀才だった清沢が、副住職を務めた愛知県碧南市の西方寺に残り未公開だった、フェノロサ講義自筆ノートを翻刻、校閲、改題した出版で、最初期の東京大学の哲学教育等の実態を明らかにする第一級の資料であることは疑いなく、その学習録の公開作業は日本における西洋哲学の初期受容の一形態を解明するとともに、フェノロサ研究の新地平を切り開く可能性をもっており、将来のフェノロサ研究の大きな基盤となった。その貢献は偉大であり、その功労を讃えるものである。
受賞代表者略歴:村山保史(むらやま・やすし)
1965年、滋賀県に生まれる。1988年、大谷大学文学部卒業。1990年、同大学院修士課程修了。1993年、関西学院大学大学院文学研究科博士後期課程哲学専攻単位取得退学。1998年、西山短期大学専任講師。1999年、大谷大学文学部講師、2004年、大谷大学文学部助教授、2014年4月より同大学教授。博士(哲学)(関西学院大学)。主著に『カントにおける認識主観の研究−超越論的主観の生成と構造−』(晃洋書房)、共著に『哲学してみる』(世界書房)、
Geschlechtergerechtigkeit: Herausforderung der Religionen(EB Verlag)ほか。
過去の学会賞
2022(令和4)年 第1回日本フェノロサ学会学会賞
学会賞について
1、学会賞の趣旨
本学会の設立趣旨に貢献し、アーネスト・フランシスコ・フェノロサ(Ernest Francisco Fenollosa、1853‐1908年)の生涯と業績、ならびに岡倉天心やビゲローなどフェノロサと関連のある人物、芸術(美術、文学、演劇等)、思想、社会等、そしてフェノロサが貢献した日本近代美術と文化財保護、さらにそれらから派生する多様な領域の学際的研究に成果のあった研究、活動を顕彰することを目的として、日本フェノロサ学会賞を創設いたします。
2、賞の内容
以下の2賞とする。
・学会賞(フェノロサ賞)
・特別功労賞(ビゲロー賞)
3、選考方法
年度以前の3か年年度までに発表された、学会員による著作、論文、展覧会企画、創作・制作活動等を対象に、学会賞選考委員会が選考し、決定する。初回から第3回は10年前までの対象とする。ビゲロー賞においては、対象年度を特に定めない。学会賞選考委員会は幹事会のなかに置き、幹事会が兼任する。
2023(令和5)年度、第2回受賞者は、下記となります。なお、授賞式は年次大会会場にて執り行います。
【第2回学会賞(フェノロサ賞)・特別功労賞(ビゲロー賞)】
学会賞(フェノロサ賞)
山田久美子氏(立教大学名誉教授)
対象業績:著作 山田久美子著 『狩野友信−最後の奥絵師、幕末・明治を生きる』(水声社、2021年12月)
授賞理由:本書は、今まで十分に研究されてこなかったフェノロサと日本近代美術に関わる重要人物の基礎的研究として、初めて単著で刊行されたものである。若くして幕府の奥絵師に任ぜられた狩野友信は、フランス皇帝ナポレオン三世に贈呈する「紅葉に青鳩図」を制作した。1862年に遣欧使節によりフランスに届けられた作品はフォンテーヌブロー宮殿に現存する。明治維新後、起立工商会社の事務所で、フェノロサとともに鑑定委員として働き、第1回鑑画会に出品。明治22年(1889年)東京美術学校雇、同24年8月には助教授となった。フェノロサに狩野派の画法を指南するだけでなく、狩野永悳や狩野芳崖を紹介し、フェノロサの日本美術研究に協力、関西の古寺社に残る古画を模写した。1893年のシカゴ万博には≪平治合戦図≫を出品している。狩野友信という江戸狩野派の系譜の核心にいて、その終焉を見届けた画家の生涯と歴史・美術史上の背景、位置づけを、遺族(友信は著者の曾祖父)という立場も踏まえて探求し続け、アイルランド文学研究・文化交流史研究者としての著者の学究的視点、論考を加え、構成した秀逸な伝記となっており、フェノロサと日本近代美術史研究において大いに貢献する、新たな基本文献となる優れた業績として高く評価できる。
受賞者略歴: 山田久美子(ヤマダ・クミコ)
1953年、東京都に生まれる。上智大学フランス語学科卒業。広島大学大学院英語学英文学専攻博士後期課程中退。アイルランド国立大学ダブリン校英語・演劇・映画研究専攻博士課程修了。博士(PH.D.,University College Dublin)。立教大学名誉教授。専攻、アイルランド文学、日米欧文化交流史。主な著書に『異界へのまなざし―アイルランド文学入門』(鷹書房弓プレス、2005年)、『ジェイムズ・ジョイスと東洋――「フィネガンズ・ウェイク」への道しるべ』(水声社、2018年)、主な訳書にャールズ・A・ロングフェロー『ロングフェロー日本滞在記』(平凡社、2004年)などがある。
特別功労賞(ビゲロー賞)
受賞対象: フェノロサ『哲学史』講義 = Fenollosa's lectures on history of
philosophy : 清沢満之フェノロサ講義自筆ノート 続々』(監修・解題:村山保史、翻刻・翻訳・校閲:味村考祐、西尾浩二、Michael Conway、2022年2月) の出版事業 (代表者 大谷大学文学部教授 村山 保史)
選考理由:本出版によって、10年以上におよぶ、東京大学在学時のフェノロサによる西洋哲学関係の未公開講義録とそれに関連する学習録の研究、出版、公開作業(フェノロサ「哲学史」講義 清沢満之フェノロサ講義自筆ノート、及び続、続々)という一大事業が完結した。清沢満之(きよざわ まんし、1863-1903)は、日本の明治期に活躍した真宗大谷派(本山・東本願寺)の僧侶、哲学者・宗教家で、真宗大学(現・大谷大学)の初代学監(学長)。東本願寺育英教校の留学生として東京大学予備門に最高成績で入学、1887年(明治20年)に東京大学文学部哲学科を首席で卒業した。哲学館(現、東洋大学)の創設時に評議員となり、心理学及び哲学史を担当する講師となった。真宗大谷派教団の改革と宗教的真理の解明に取り組んだ近代真宗教学先駆者だったが、肺患と極度の制欲自戒生活により早世した。そうした異色の人物で秀才だった清沢が、副住職を務めた愛知県碧南市の西方寺に残り未公開だった、フェノロサ講義自筆ノートを翻刻、校閲、改題した出版で、最初期の東京大学の哲学教育等の実態を明らかにする第一級の資料であることは疑いなく、その学習録の公開作業は日本における西洋哲学の初期受容の一形態を解明するとともに、フェノロサ研究の新地平を切り開く可能性をもっており、将来のフェノロサ研究の大きな基盤となった。その貢献は偉大であり、その功労を讃えるものである。
受賞代表者略歴:村山保史(むらやま・やすし)
1965年、滋賀県に生まれる。1988年、大谷大学文学部卒業。1990年、同大学院修士課程修了。1993年、関西学院大学大学院文学研究科博士後期課程哲学専攻単位取得退学。1998年、西山短期大学専任講師。1999年、大谷大学文学部講師、2004年、大谷大学文学部助教授、2014年4月より同大学教授。博士(哲学)(関西学院大学)。主著に『カントにおける認識主観の研究−超越論的主観の生成と構造−』(晃洋書房)、共著に『哲学してみる』(世界書房)、
Geschlechtergerechtigkeit: Herausforderung der Religionen(EB Verlag)ほか。
過去の学会賞
2022(令和4)年 第1回日本フェノロサ学会学会賞
学会賞について
1、学会賞の趣旨
本学会の設立趣旨に貢献し、アーネスト・フランシスコ・フェノロサ(Ernest Francisco Fenollosa、1853‐1908年)の生涯と業績、ならびに岡倉天心やビゲローなどフェノロサと関連のある人物、芸術(美術、文学、演劇等)、思想、社会等、そしてフェノロサが貢献した日本近代美術と文化財保護、さらにそれらから派生する多様な領域の学際的研究に成果のあった研究、活動を顕彰することを目的として、日本フェノロサ学会賞を創設いたします。
2、賞の内容
以下の2賞とする。
・学会賞(フェノロサ賞)
・特別功労賞(ビゲロー賞)
3、選考方法
年度以前の3か年年度までに発表された、学会員による著作、論文、展覧会企画、創作・制作活動等を対象に、学会賞選考委員会が選考し、決定する。初回から第3回は10年前までの対象とする。ビゲロー賞においては、対象年度を特に定めない。学会賞選考委員会は幹事会のなかに置き、幹事会が兼任する。