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日本フェノロサ学会 学会概要

「日本フェノロサ学会」創立 大浦幸男

  フェノロサが来日したのは明治11年だが、当時の日本は欧米心酔の時代であった。泰西名画.西洋文学が知識人の血を湧かしていたが、その反面、日本乃至東洋の芸術・文化・文学はとかく軽視される傾きがあった。フェノロサは元来西洋哲学を専攻する学者であったが、来日後はしだいに日本の文化と芸術に関心を持ち、その優秀性に着目した。当時軽視されていた日本の芸術が、東京帝大教授の職にある西洋人によって再認識されたのだから、その影響は極めて大きかつた。彼はまた、梅若実に弟子入りして能楽、森塊南に師事して漢字・漢詩を学び、仏教に帰依するなど、単なるエトランジェにとどまらず、自ら実践して日本文化の核心を探ろうとしたのである。

 フェノ口サが日本にいたのは明治時代だが、歴史を巨視的に眺めると、西洋の文化・文明が覇権を誇っていた時代は今や終末に近づいているのではなかろうか。今後は、キリスト教を中心とする西洋文明と、仏教を核心とする東洋文明が並存し、相互の思想・文化が融合して、新らしい綜合的世界文化が芽生えてくる、と私は考える。かかる時代に、約一世紀前に東洋・西洋の接点に生きたひとりの米国人フェノロサの研究を推進するために本学会が創立されたことには大いに意義があると思う。

 フェノ口サの関心は、哲学・思想・宗教・美術・文学など、各方面にわたっているので、本学会もまた学際的な特色を持たねばならぬ。従つて、各方面の研究者が、自己の専門だけにとらわれず、広い視野に立って研究を進めることが望ましい。また、東西文化の交流という見地からも、本学会は国際的でなければならない。

 本学会の本部が、フェノロサが深く愛したこ琵琶湖のほとり、遺骨の眠る園城寺、また古くは志賀の都があった形勝の地、大津におかれたこともまことにふさわしい。大津市.大津市教育委員会が本学会に寄せられたご好意に対し、深く謝意を表したい。今回、機関誌LOTUSが創刊されることになったが、その発刊を悦ぶと同時に、会員各位、殊に編集委員並びに事務局の諸氏の労に感謝を述べたい。
                     (『LOTUS』No.1、昭和56年3月)


 

歴代会長

初代会長 大浦幸男(京都大学教授)
2代会長 山口静一(埼玉大学名誉教授)
3代会長 前川哲郎(滋賀大学名誉教授)
4代会長 村形明子(京都大学名誉教授)
5代会長 神林恒道(大阪大学名誉教授)

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