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ご挨拶


会長あいさつ
             日本フェノロサ学会 会長 岡部昌幸
            (帝京大学大学院文学研究科日本史・文化財学専攻教授、
             群馬県立近代美術館特別館長、畠山記念館顧問)

 アーネスト・フランシスコ・フェノロサ(Ernest Francisco Fenollosa 1853年2月18日 −1908年9月21日)は、19世紀後半から20世紀初頭の日本と欧米にわたる東西文化交流の偉人でした。スペイン人音楽家の子としてアメリカ・マサチューセッツ州セイラムに生まれ、ハーバード大学に学び、先に来日していた動物学者エドワード・モースの紹介で、東京大学で教鞭をとりました。明治前期の日本に新しい哲学、法学、社会学や思想をもたらしただけでなく、優れた教育者であり、フェノロサのもとからは日本の近代を切り拓いた多彩な人材が輩出されました。
 そして日本文化・芸術を愛し、廃仏毀釈により荒廃していた京都・奈良の調査・研究・保護を弟子であった岡倉覚三(天心)などと行い、文化財保護の運動を起こし、世界にも類例をみない今日の文化財保護法、国宝制度の考案、制定に貢献しました。さらに岡倉とともに、滅びかけていた狩野派初め日本美術の絵師たちを後援して、現代世界に通用する新日本画(日本美術)を創造させ、新しい国立の東京美術学校(現・東京藝術大学)を創立させるのに尽力、その系譜が日本近代美術史の主流を形成しています。国の政策や社会の風潮を、日本の伝統と歴史を見直す方向に転向させたことは、西洋文化偏重がその全盛期であった19世紀後半から20世紀初頭の世界の近代社会においては、きわめて異例で、今日の多様的でグローバルな文明史の視点を予言し、実行する者だったといえるでしょう。
 学者としては、初めて系統的大系に基づいた大規模な日本美術収集をウィリアム・スタージス・ビゲローと協力して行い、アメリカ帰国後はボストン美術館の初代東洋部長を務め、収集と研究によって同部門の基礎を作り上げ、日本・東洋美術史研究の先駆『東洋美術史綱』をまとめました。また教育者アーサー・ダウに協力、日本美術の美学を取り入れ、20世紀のデザイン教育の発展を推進、現代アメリカ美術の美術評論においても足跡を残しました。さらに美術に限らず、書、能など広く日本の芸術、文化を愛好、国際的に紹介し、その影響はイギリスの詩人エズラ・パウンドや劇作家W.B.イェイツに大きく、文学を中心とした20世紀欧米のモダニズム運動であったイマジズムの勃興にまで及んでいます。
 このようにフェノロサとその時代の研究は学際的、国際的に展開するテーマでもあります。そしてその研究の最先端は日本の本学会にあり、仏教を学び、帰依していたフェノロサは、その盟友ビゲロ―とともに、大津の園城寺(三井寺)法明院に葬られています。本学会の40年あまりの歴史と今後は、この日本の第一の恩人であり、日本と世界の芸術、文化、学術の架け橋となったフェノロサの顕彰と、研究の発展を、より広い分野に拡大していくことと思っています。
       


事務局長あいさつ 
                  日本フェノロサ学会 事務局長 井上 瞳
                        愛知学院大学文学部准教授)

 「日本フェノロサ学会」は1980(昭和55)年に滋賀県大津市において、大津市及び大津市教育委員会、三井寺及び法名院、研究者、大津市民等の関係各位のご尽力によって設立され、すでに40年以上の研究活動を積み重ねてきました。発足以来の学会機関誌『LOTUS』も継続して発刊しています。
 当学会が研究の中心とするアーネスト・フランシスコ・フェノロサは、一般に「東洋美術研究家」として広く知られています。歴史教科書には、岡倉天心と共に伝統美術の育成を目指して東京美術学校を設立した人物、といった記述があります。 しかし彼の業績はこの肩書だけに留まるものではありません。ここで改めて
『LOTUS』第29号「フェノロサ没後百周年記念号」(2008年)を手に取り、東京大学で開催された「フェノロサ没後百周年記念シンポジウム」を見てみると、日本美術史から辻惟雄氏、経済学からは榊原英資氏、さらに哲学から加藤尚武氏、政治学から渡辺浩氏、社会学から栗原彬氏と、フェノロサから繋がる錚々たる顔ぶれの「門弟」らが祝辞を述べられています。つまり東京大学で教鞭を執ったフェノロサは、日本におけるこれら各学問の創始に関わっており、このほか敢えて付け加えるなら、宗教学や博物館学などに対する貢献も挙げることができるでしょう。
 さらにフェノロサの活動は海外に広がっています。ボストン美術館日本部の部長としての展覧会活動に加え、数多くの著書によって、美術史や美術教育だけでなく欧米における日本文化の幅広い理解に大きな影響を与えました。
 こうしたフェノロサの活動を背景に、近年の当学会では、フェノロサ研究のみならず、近代美術及び周辺の研究について、若手を中心に年次大会で発表されています。これからの学会の発展のためにも、新たな企画や魅力の発信も行っていきたいと思います。今後とも関係各位の本学会に対するご支援、ご協力をお願い申し上げます。      


 

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